相続対策としての不動産生前贈与について
将来的な相続税額を抑えるためには、相続開始時における被相続人の財産を減らす方法を考える必要があります。そのために検討される手段のひとつが「生前贈与」です。
特に不動産については資産価値が高額なこともあり、特例等を利用して生前贈与を行えば相続税対策として高い効果が期待できます。将来的に価値が上がる不動産であれば、「相続の前倒し」として先に渡した方が税金面でも得策となる可能性が高いでしょう。
また相続税対策以外にも生前贈与は財産の所有者が承継したい人に確実に財産を渡せる手段となるため、相続トラブル対策としても利用されています。
しかしながら生前贈与にはデメリットの側面もあるため、必ずしもすべてのケースにおいて得策になるとは限りません。
贈与と相続では、手続きにおいて納めるべき税金の種類や税率が異なります。
相続税額の減額のみを期待して生前贈与を行うのであれば、贈与時に発生する税額が上回ってしまっては意味がありません。
こちらでは、相続対策として不動産の生前贈与を行った際に考えられるメリット・デメリットをお伝えいたします。
不動産の生前贈与におけるメリット
不動産を生前贈与することによって得られるメリットは以下の通りです。
(1)相続税額の軽減が期待できる
不動産を生前に贈与すればそのぶん相続財産を減らせるため、結果的に相続税額の軽減につながる可能性があります。
ただし贈与税の方が相続税よりも税率が高く設定されているので、何も対策を行わずに贈与をしては、相続税として課せられる税額よりも高い税金を支払うことになりかねません。
それゆえ、生前贈与を行う際には暦年贈与の非課税枠や贈与税の特例を活用する必要があります。
【夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の特例】
居住用の不動産もしくは居住用の不動産を得るための金銭の贈与が夫婦間で行われた場合に、最大で贈与税が2,000万円まで控除される特例。対象となるのは婚姻期間が20年以上の夫婦。
なお特例を利用した贈与については、相続時に課税対象となる3年以内の贈与としての持ち戻しに加算されない。
【暦年贈与】
贈与税の課税方法のひとつ。1年間(1月1日から12月31日)に贈与された分の合計額が110万円以下ならば贈与税はかからない。上記配偶者の特例と併用することが可能。
生前贈与は自由にタイミングを選択できるため、再開発等で将来的に評価額が上がる可能性のある土地等を贈与で次の世代に渡しておけば相続税額にも影響するでしょう。また収益物件を贈与しておけば、相続までの間に発生する所得額を抑えることも期待できます。
(2)遺産相続トラブルの回避につながる
不動産は分けることが難しいことから、遺産分割においてトラブルの種になりやすい財産です。生前贈与ならば、贈与する側と贈与される側との契約によって贈与者が望む相手に財産を渡すことが可能です。
将来おこりうる遺産分割のトラブルに備え、生前に対策が行えます。
不動産の生前贈与におけるデメリット
(1)贈与税が発生する
当然のことながら一定額以上の財産を贈与すると贈与税が発生します。
贈与税の税率は相続税の税率より高いため、相続税の節税が目的であるならば、上記の特例等を活用しない限り生前贈与はおすすめできません。
(2)相続で取得するよりもコストが高くなる
相続と贈与では不動産登記の際の登録免許税の税率も異なり、相続した場合の登録免許税は固定資産評価額の0.4%ですが、贈与で財産を引き継いだ場合には固定資産評価額の2%の税金を納めることになります。
また、相続で相続人が承継した際には発生しない「不動産取得税」も贈与の場合は対象です。
それゆえ、贈与税の配偶者控除により贈与税が免除されるからと安易に判断せず、それらの税金と合算し、得策であるかを見極めたほうが良いでしょう。
不動産の生前贈与が相続対策としての意味を成すには
不動産の生前贈与を成功させるためには、贈与によってかなえたい目的を明確にする必要があります。
例えば相続税の軽減が一番の目的であるならば、将来的に値上がりする可能性のある物件であるのか、贈与により不動産から得る収益分の所得を減らせるのか、不動産取得税を支払っても得策であるかなど、さまざまな側面から総合的に判断しなければ望む結果につながるとは限りません。
不動産の評価を含めて生前贈与に関する試算を行うためには、税務や登記に関する専門知識を要することになります。生前贈与をご検討の方はぜひ、堺なかもずシニアの相談窓口の専門家までお問い合わせください。
当相談窓口ではパートナーである相続税に精通した税理士事務所と協力し、皆様の生前対策について対応させていただきます。
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