危急時遺言について
一般的に知られている遺言書のほかに、緊急時においてのみ作成できる遺言書として「危急時遺言」というものがあります。
危急時遺言とは生命の危機が迫っている場合に行う遺言であり、緊急性が高いことから口頭による遺言を証人が代理で書面化することが認められています。
危急時遺言には「一般危急時遺言」と「難船危急時遺言」の2種類があり、一般危急時遺言が病気やケガなどを起因とするのに対し、難船危急時遺言は船の遭難で船中にある状況に限られています。
利用する機会はほぼないといえる遺言方法ではありますが、ここでは「一般危急時遺言」に絞ってご説明いたします。
一般危急時遺言における4つの要件
一般危急時遺言で遺言を残さなければならない状況に陥った場合、どのような要件をもとに作成する必要があるのでしょうか。以下に4つの要件を取り上げますので、ご一緒に確認していきましょう。
要件1:3名以上の証人の立ち会いが必要
一般危急時遺言で遺言を残す場合、3名以上の証人がその場に立ち会う必要があります。証人になれる者には決まりがあり、以下に該当する方は証人になることはできません。
- 未成年
- 遺言者の推定相続人および受贈者
- 遺言者の配偶者や直系血族
- 4等身内の親族
- 書記 等
上記をみてもわかるように、遺言者の利害関係人の多くは証人になれません。
一般的には司法書士や行政書士などの専門家が証人になりますが、生命の危機が迫っている状況で作成することから非常に難しい手続きであることは確かです。
要件2:遺言者の口述を受けた証人が遺言内容を書面化する
生命の危機が迫っているということは、遺言者自身で署名・押印できない状態にあります。それゆえ、1名の証人が遺言者の口述を聞き取り、代理という形でその遺言内容を書面化します。
要件3:遺言内容に誤りがないかを確認する
書面化した遺言内容に誤りがないか、遺言者と他の証人に閲覧や読み聞かせなどの方法で確認してもらいます。
要件4:証人全員で署名・押印を行う
遺言内容に誤りがないことを証明するために、遺言者が見ている前で書面化したものに証人全員で署名・押印を行います。その際の印鑑については実印、認印どちらでも構いません。
上記4つの要件をもとに一般危急時遺言を作成した後は、家庭裁判所に対して申し立てを行います。
一般危急時遺言を作成した後の手続き
一般危急時遺言を作成したら、立ち会った証人もしくは利害関係人となる者は遺言の日から20日以内に家庭裁判所へ申し立てを行い、確認を得なければなりません。
この手続きをしないと遺言としての効力を失ってしまうため、必ず行うように注意しましょう。
この期限内までに遺言者がご逝去された場合はご逝去された場所(病院や現場等)を管轄する家庭裁判所が申立先となりますが、存命の場合には遺言者の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。
なお、一般危急時遺言は遺言者が普通方式で遺言が残せる状態になった時から6か月間生存した場合には、無効という扱いになります。
申し立てを行う場合に必要な書類
- 申立人(証人もしくは利害関係人)の戸籍謄本
- 遺言者の戸籍謄本
※ご逝去された場合は除籍謄本 - 立ち会った証人の住民票もしくは戸籍の附票
- 遺言書の写し
- 医師の診断書(遺言者が存命の場合)
※申し立ての際には収入印紙800円(遺言書1通毎)と郵便切手代がかかります。
危急時遺言を残す場合というのは緊急性の高い状況であり、遺言者の状態も不安定にあることから、あらかじめ打ち合わせ等を行えないケースがほとんどです。
ゆえに法律的な判断をその場で下す必要があるため、依頼される際は危急時遺言の作成実績を持つ専門家を選ぶことをおすすめいたします。
即座に対応できなければ、遺言者が遺言を残す機会が失われることになります。
危急時遺言で遺言を残さなければならない状況に陥った際は、危急時遺言の作成に対応している堺なかもずシニアの相談窓口にお任せください。知識・経験ともに豊富な司法書士が全力でサポートいたします。